VANTAN×EDGELINK

産学共同企画
- コラボは、いかにして生まれたのか? -

Episode.1 1本のTELがすべての始まり
Episode.2 いよいよ初めての授業
Episode.3 サンプル完成
Episode.4 日帰りパークツアーへ
Epilogue

Episode.1

1本のTELがすべての始まり

“日本初”のプロスケーターを育てるスクールとして、2017年4月に開講した、バンタンデザイン研究所 高等部 スケート&デザイン専攻。
バンタンと言えばファッションのイメージが強く、その他のイメージが湧かないほど、ファッションスクールという認識でした。
スケートボードをベースにしたブランドをスタートさせる!ということは決めていたので、そもそもスケボーを学ぶ高校生たちがいることに驚きを感じつつも、「なんだかおもしろいことができそう!」という何気ないふとした感覚から、思い切ってスクールにTELしたことからこのストーリーは始まります。

2022年夏

「スケボーを背景にしたバッグブランドを立ち上げたいのですが、お話聞いていただけませんか?」 
対応してくれたのはスケート&デザイン専攻を担当している影正先生・植田先生のお二方。

初めてお会いしたにも関わらず、自己紹介含めざっくばらんにお話をしたところ「いいっすよ!ぜひやりましょう!」の一言で快諾。そこから、どうやって一緒にコラボして産学共同企画を進めて行くか?ということを相談していきました。

ポイントは、「スケーター少年たち(学生)が興味を持って、楽しんでくれるか?」ということ。彼らは本当に“正直者”なので、嫌なものは嫌!興味のないことは聞かない!楽しそうことには全力で取り組んで楽しむ!というスタイル。せっかくの企画なので、大人から無理にやらせるということをすると、彼らもノッてこないし、そうしてできた産物も当然良いものではありませんよね。何度も影正先生とMTGし、「どうやったら彼らが楽しんでくれるか?」を考え、下手な小細工なしに、大人と学生が真っ向からぶつかってみることにしました。

Episode.2

いよいよ初めての授業

2023年4月

普通科高校出身の私としては、「高校生ってこんなんだっけ?」と戸惑うほど、自由な校風、雰囲気。正直に言ってしまえば「全国のヤンチャなスケボー少年が、この教室に集結した感じで、向かってきたらどうしよう。。。」と少しビビりながらの第一声。

「はじめまして!EDGELINKいうブランドを立ち上げるのですが、皆さんと一緒にバッグを作ってみたいと思います!」→「・・・・」

「皆さんは普段どういったバッグを使ってますか?」→「・・・・」

「どんなことに興味がありますか?」→「・・・」

なんとも、一方的に講演するセミナーのようになってしまい、なかなか距離を縮めることができませんでした。そこで作戦変更。全体に話を投げかけるのではなく、一人ひとりに同じ質問を繰り返して「対話」していくことに。

2023年5月

2回目の授業。一人一人としっかり向き合い、時間はかかるが「対話」しながら意見交換していくことに。そうすると、見た目はヤンチャな彼らも、しっかりと「自分はこう思います」「こういうの調子いいす」と、素直なコメントが次々と!

「おれ、リュック持たないす」「うそ、おれ絶対リュック必須よ?」

「でかいのヤダ。できるだけコンパクト」「ショルダーバッグで十分っしょ?」
などなど、あれ?さっきまでは何だったの?というくらい、いろんな意見が出るわ出るわ。自分たちの普段のライフスタイルを見つめ直して、たくさんの意見が出てきました。 

「今日はありがとう!お疲れ様です!次回は、みんなにもらった意見をデザイナーにフィードバッグして、バッグのデザインを見てもらえるようにするね!」

Episode.3

サンプル完成

その後も、何度も授業を通じてスケーター少年たちをキャッチボールし、商品開発の方向性が見えてきた梅雨の頃。「リュック」と「ショルダーバッグ」を開発することで企画が進み、いよいよ1stサンプルが完成!今まで「言葉」や「線で描いた絵」でしか見ていなかったスケーター少年たちも、どこまで自分たちの意見が反映されているのか半信半疑な印象。

「みんなと一緒に考えてきたバッグ、サンプルできたよー!」

「なにこれ!まじ調子いい!かっけー」「ここどうなってんすか?」「ここ、ボード取り付けると弱くならないすか?」「ウィールとかWAXとか、整理収納できたらいいかも」「もう少しコンパクトな方が、俺好きかな」

今まで、「言葉」と「絵」でしか見ていなかったこともあって、どんなものを作っているのか、あんまり想像できていなかった様子。やはり、実物を見ると分かりやすいですよね。
みんなでサンプルを回しながら、いろんな意見を出し合いました。

振り返ってみると、実物の1stサンプルが上がってきたタイミングから、この企画が一気に波に乗って進んでいった気がします。あと、このあたりから、スケーター少年たちとブランド担当者との距離が縮まって来て、何気ない話も良くするようになりました。

2023年9月

1stサンプルの開発から、2nd→3rdサンプルと製作を進めて行き、いよいよ展示会でのお披露目に。カバン単体で見るのと違って、ディスプレイも含めてブランドの世界観を表現しています。一緒に作ったバッグ以外もたくさん並んでいるので、それぞれが気になったバッグを買い物気分で手に取っていました。

Episode.4

日帰りパークツアーへ

展示会も無事に終了し、次は、バッグの使いやすさをチェックするためにスケーター少年たちと共に日帰りのパークツアーへ。大型観光バスを貸し切って、柏しょうなんゆめファームのスケートボードパークに行きました。

実際に作ったバッグが本当に使いやすいか?もっと良くするために何か足りないことはないか?といった視点で、みんなに普段通りにスケートボードパークを楽しんでもらいました。

バスの車中でも、いつもと変わらずマイペースなスケーター少年たち。集合が朝早かったにもかかわらず、朝から全開で盛り上がっているグループ。のんびり隣の友達と話をして過ごす子たち。ずっと寝ている子。ずっとお菓子を食べている子。爆音でYouTubeを見る子。
本当に自由で気取らず、本能のままで今を楽しむスケーター少年との移動は、数時間の移動にもかかわらずあっという間に過ぎ去りました。

商品の使い心地を試しながら、いくつかのグループに分かれて、カッコ良いスケートムービーや写真撮影を行ってもらうことに。

始める前のミーティングでは、今まで大声で騒いでいたスケーター少年たちも静かに話に耳を傾けていました。グループ分けもすんなり決まり、いよいよ各グループに分かれて撮影大会の開始。スタートの合図とともに、散り散りにスケートし、今までいたミーティングスペースには誰もいなくなりました。今まで騒がしかった彼らが静かにしていた理由。説明はいいから早く滑らせてよ!ということの意思表示だったとその時気が付きました。

スケートをする彼らはというと、今までの「高校生」という雰囲気がなくなり、それぞれが水を得た魚のようにテクニカルにトリックを決め、SNSやYouTubeのスケートムービーで見るような難易度の高いトリックも次々繰り出します。



Epilogue

いかがだったでしょうか?
こうして、1年以上の歳月をかけて、VANTANデザイン研究所のスケーター少年たちと一緒に最高のスケーターバッグを作り上げてきました。

最初は「企業のオトナ」と「学生」との間に高く分厚い壁がありました。少しずつ時間をかけて対話し、お互いがお互いを「仲間」と認め合えるようになるまで本当に時間がかかりました。それでも本気で向き合い、楽しんで、一つの目標に向けて取り組んでいく中で、年齢も立場も関係なく、同じ時間を過ごすことで、いつしか壁はなくなっていきました。なにごとも本気で楽しみ、相手が大人だからと言って怯まず、自分のスタイルを崩さず常に自分に正直にいる彼らだったからこそ、リアルな意見が詰まった究極のスケーターバッグが完成できたように感じます。

今では、普段街を歩いているときもハイタッチするほど仲も良くなり、SNSでもつながっています。“スケートボード”のお互いの個性を尊重し、お互いを認め合うカルチャーがあるからこそ、ここまで仲良くなることができたと思います。今後も、彼らと一緒に楽しい企画ができればうれしいです。

EDGELINK ブランドマネージャー